糖尿病

糖尿病とは

糖尿病はインスリンが不足し、血液の中の糖(血糖)が過剰な状態のことです。その結果溢れた糖が尿から漏れるため糖尿病と名付けられています。糖尿病はただ尿から糖がでる病気、という訳ではなく身体に様々な悪影響を及ぼします。ではまずインスリンとは何なのでしょうか。健康な人でみてみましょう。下図のように通常摂取した食事は血液の中を糖として流れます。糖が細胞の中に取り込まれるために必要なのがインスリンです。インスリンは膵臓という臓器で作られています。インスリンの助けを借りて細胞の中に糖が取り込まれると、細胞は栄養として糖を利用することができます。

糖尿病には1型と2型があります。1型糖尿病は膵臓のインスリンを作る工場が破壊されている状態です。インスリンがないので血液の糖は細胞に運ばれず、糖が過剰になります。一方で細胞は糖がないので栄養不足になってしまいます。そのため1型糖尿病の人は体の外からインスリンを補充しないといけません。

1型糖尿病は比較的若い人に多く、インスリンの補充が体外から必要なため以前はインスリン依存型糖尿病と呼ばれていました。

続いて2型糖尿病はインスリンが膵臓から十分に出ていない(インスリン分泌障害)、もしくはインスリンが出ていてもインスリンがうまく働いていない(インスリン抵抗性)という2つの問題が様々な程度で出現し、血糖が高くなっている状態です。日本人はインスリン分泌障害の方が強い傾向にあります。

2型糖尿病では膵臓から少なからずインスリンは出ているのですが、人によっては過剰な血糖を抑えるためにインスリン治療が必要になることがあります。2型糖尿病は40歳以降に病気にかかる人が多く、肥満の人に多い傾向があります。

糖尿病と診断するためには慢性的に血糖が高い状態であることを確認する必要があります。その判断基準は以下のようになります。

糖尿病型の判断基準

①血糖値

早朝空腹時≧126mg/dL、75gOGTT2時間値≧200mg/dL、

随時≧200mg/dLのいずれか

②HbA1c

≧6.5%

※75gOGTTとは75gのブドウ糖を飲んで血糖の検査することで、負荷2時間後の血糖を75gOGTT2時間値といいます。

※HbA1cとは採血時点より1〜2ヶ月前の血糖の平均の値を反映しています。正常は4.6〜6.2%です。ただし血液や肝臓などの病気があると数値が不正確なことがあります。

 

・①と②の両方に該当すればその時点で糖尿病と診断されます。

・①に該当していて糖尿病の典型的な症状や糖尿病による眼の障害が確認されればその時点で糖尿病と診断されます。

・①もしくは②に該当すれば「糖尿病型」と判断され再検査を1ヶ月以内に行い、再度「糖尿病型」であれば糖尿病と診断されます

糖尿病の患者はおよそ1,000万人、糖尿病の可能性がある人(糖尿病予備群)も含めると現在日本に約2,000万人いるといわれており、その数は成人の4人に1人になります。

 

どうして糖尿病になるの?

1型糖尿病は自己免疫と原因不明(特発性)でなることが多いとされます。自己免疫とは自分の中のバイ菌を倒すための兵隊(免疫)が自分の体、ここでは膵臓を攻撃してしまうことです。1型糖尿病に家族の遺伝でなることもありますが、2型糖尿病よりは少ないとされます。2型糖尿病はインスリン分泌障害やインスリン抵抗性を引き起こす遺伝子を持つ人が食べ過ぎ、運動不足などいくつかの要素をきっかけとして糖尿病になります。

糖尿病は何が悪いの?

糖尿病では、初期の段階では症状を認めません。病気が進行すると尿がたくさん出るようになり、喉が渇いて、水をたくさん飲むようになり、体重が減っていきます。糖尿病の症状そのものよりも、糖尿病はその合併症が大変なものになります。最も大事な合併症は動脈硬化で、脳梗塞や心筋梗塞にかかり易くなります。それだけではなく眼の障害、腎臓の障害、神経の障害を引き起こします。具体的には糖尿病が進行すると失明、透析が必要になり、足の感染症をひきおこし、足が腐ってしまうことがあります。その他にも認知症、感染症、いくつかの癌になりやすくなるなどさまざまな病気の原因になります。

検査の時には

血糖の数値は食事によって大きく変動します。そのため空腹な状態で血液検査をする必要があります。空腹とは、10時間以上何も食べていない状態で、この時にはカロリーのある飲み物も飲まないようにしましょう。水やお茶であれば検査の前に飲んでいただいて構いません。

糖尿病予防・進行を防ぐための食事・運動とは

しっかりとした食事と運動のダイエットによって体重が多い2型糖尿病の方は心臓病のリスクが下がることが証明されています。

そのためにまずはご自身の食生活を確認する必要があります。自分の1日の食餌を振り返ってみましょう。適切なエネルギー摂取量、バランスのとれた食餌、規則正しい食生活、ゆっくり時間をかけて食べているか、腹八分でやめているかどうか、を意識しましょう。一般的にはエネルギー摂取量のうち、50〜60%を炭水化物、タンパク質は20%までとし、残りを脂質となるように調節しましょう。1回の食事量が多いと血糖値の1日の変動が大きくなりますので炭水化物の量や配分には注意しましょう。

適切なエネルギー摂取量(kcal)=標準体重×身体活動量

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

身体活動量

軽い労作(デスクワーク)         25〜30kcal/kg

普通の労作(立ち仕事が多い仕事) 30〜35kcal/kg

重い労作(力仕事が多い仕事)     35〜kcal/kg

また食事を食べる順番も大事で、まずはタンパク質もしくは野菜をゆっくり食べるようにして、ご飯などの炭水化物は最後に取るようにした方が良いといわれています。

運動については有酸素運動とレジスタンス運動があります。有酸素運動は歩行、ジョギングなど、レジスタンス運動とはダンベルや腕立て伏せ、腹筋など体に負荷を与える運動です。有酸素運動は50歳未満では心拍が100〜120回/分、50歳以上では100回/分以内にとどめる運動です。運動はできれば食後1時間の方が望ましいですが、実際には患者さんごとの生活に合わせて取り組める運動や時間を相談して決めます。日常生活の中でも普段より10分遠回りする、いつもより歩幅を広くして歩くなど心がけましょう。また糖尿病や持病をお持ちの方の中には運動をしてはいけない人もいますので、まずは当院の医師に運動が可能かどうかご相談ください。その他杉並区や荻窪の保健所で栄養相談も実施しています。

いかがでしょうか。医師は糖尿病の患者さんごとにインスリン分泌、抵抗性のどちらの問題なのかを考えて薬やインスリン製剤を処方し、それぞれに適した治療目標や、方法、合併症の精査などを行なっていきます。しかし薬だけではよくすることはできません。普段からの患者さんの日常生活の改善に取り組んで二人三脚で頑張る必要があります。まず中島医院でご相談ください。あなたのための糖尿病治療の計画を一緒に考えます。
なお、大変申し訳ありませんが当院ではインスリン治療は行っておりません。

参考資料

糖尿病治療ガイド2018−2019
厚生労働省 平成28年「国民健康・栄養調査」の結果
American Diabetes Association Standards of Medical Care in Diabetes-2018