ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌とは細菌の1種で、感染するとおもに胃の表面に住み着きます。通常は胃酸によって細菌は胃の中に住めないのですが、ピロリ菌はウレアーゼというもので胃酸から身を守っており、胃で悪影響を起こします。多くの人はピロリ菌に感染しただけでは症状はありません。しかしピロリ菌は胃炎、胃潰瘍、胃癌、それ以外にもさまざまな病気の原因となります。日本ではおよそ50%の人がピロリ菌に感染しているといわれ、感染している割合は年齢が上がるほど高くなるといわれています。

どうしてピロリ菌に感染するの?

ピロリ菌に感染する原因に関してはまだ不確かですが、子供時代の衛生環境、生活状態や出生地が関係しているとされます。便もしくは口からの感染の可能性が指摘されています。日本での通常の生活では感染することはまれです。大人になってから新たに人から感染することはあまりありません。しかし母親から子供が感染することはあります。ピロリ菌の感染を予防する方法は不明ですが、一般的にはよく手を洗う、きちんと調理された食事を取る、安全な水を飲むことが大事とされています。

ピロリ菌はなぜ除菌しないといけないの?

最大の理由は胃癌の原因となるからです。ピロリ菌に感染している人はピロリ菌に感染していない人より2〜6倍胃癌になりやすいとされています。また慢性胃炎の80%、胃潰瘍の80%以上、十二指腸潰瘍の90%以上の方が、ピロリ菌感染しています。その他にも胃MALTリンパ腫、胃過形成性ポリープ、機能性ディスペプシア、鉄欠乏性貧血、免疫性血小板減少性紫斑病など複数の病気でピロリ菌が原因となっていることがわかってきています。これらの病気はピロリ菌によって防げる可能性があります。見つかったら必ず除菌をしましょう。

ピロリ菌の検査は誰でもできるの?

残念ながらピロリ菌は誰でも保険で検査できるわけではありません。ピロリ菌が引き起こす病気がわかった時だけしか検査ができません。具体的には以下の方だけが保険の適応になります。

・内視鏡検査またはバリウム検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断を受けた方

・内視鏡検査で胃炎の確定診断を受けた方

・早期胃癌で内視鏡の治療を受けた方

・胃MALTリンパ腫、または免疫性血小板減少性紫斑病の病気をお持ちの方

しかし前述のようにピロリ菌で胃癌など防げる可能性のある病気があります。なってから検査するより、なる前に予防治療も大事です。中島医院では自費でのピロリ菌検査も実施していますのでご希望の方はご相談ください。またピロリ菌の検査はいろいろありますが、当院では確実性の高さから血液の検査で確認しています。

ピロリ菌の除菌はどうやってやるの?

抗生物質を含む薬を1週間内服して治療します。しかし最近はピロリ菌の中で構成物質が効きにくい菌(耐性菌)がみられることがあり、1回の治療で除菌できる確率は70〜80%程度です。1回で治療できていなかった場合には再度治療を行います。2回目の治療でおよそ90%の人が治療に成功します。また治療薬で副作用が出ることがあります。その副作用としては下痢、味覚の変化、発疹、腸炎、アレルギーなどがあります。除菌ができたかどうかは除菌治療をしてから1ヶ月後に呼気試験という検査で確認します。

ピロリ菌は一度治療したら感染しないの?

ピロリ菌は除菌をしても残念ながら全く再感染しないわけではありません。しかし一度治療した後に再び感染する確率は年2%程度です。また除菌をした後に一時的に逆流性食道炎になることがあります。

いかがでしたでしょうか。ピロリ菌は症状がないことが多く、治療はすぐに終わらないこともあります。しかし胃癌や胃潰瘍、胃炎などになる可能性をかなり下げてくれる大事な治療です。ぜひ検査や治療をしてこれらの病気の予防のご検討ください。

参考資料

H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016年改訂版
CDCホームページ Helicobacter pylori and Peptic Ulcer Disease The Key to Cure